2013年12月10日

博多鋏('13年6月製作開始・6寸 その3)

これ、ちょいと前の話になるのですが
前回コチラ↓で紹介した
http://uinversal.seesaa.net/article/375119609.html
6寸鋏の、その後ですが。
まあ、誰も気にしちゃあ
いないでしょうけど……。

擦り合わせがいまいちで
アイの面などを見て
いろいろ研究していたのですが……
アイの面なんぞ以前に、
刃裏の研ぎもいまいちなことが発覚。
これじゃあ、どうにもこうにも
師匠の鋏の切れ味に
届くなんてことできないことを
再認識した次第(涙)。

そこで、師匠が
「これ、使ってみれば?」
と手渡してくれたのが1本の棒。
よく見ると溝が刻まれております。

「博多鋏では、あまり使わんやり方
なんやけど、この溝に刃をかませて
ひねりを加えるったい。そうすると、
刃と刃がより1点で合わさるようになり
切れ味が増すようになるんよ。
鋼が折れてしまうことがあることを
覚悟してやらんといかんけどな」

鋼はいったん焼き(ヤキ)をいれて
固くしてしまうと、もろくなるという
特徴も持つんですな。
31210-1.JPG 31210-2.JPG
恐る恐る力を加え……
まあ、ちょっとはひねりを入れることは
できたのですが、あまりやり過ぎると
本当にポキっと折れて、全てがパ〜
ってことになっちゃいますので
大概のところで諦めた次第。

博多鋏は穂が短いことも特徴で
そんな刃をひねるなんてこと
相当危険をともなう行為なんですな。
しかし、これで少しは
切れ味も増したような気がします。
31210-3.JPG 31210-4.JPG

ところで、博多鋏は
以前にコチラ↓で紹介したように
http://uinversal.seesaa.net/article/163652361.html#more
古くに中国大陸から渡ってきた
「唐鋏」と呼ばれるものを
原型としているのですが、
日本には同じくこの「唐鋏」を原型
とした鋏がもうひとつ残っておりまして
それが「種子鋏」と呼ばれるものです↓
http://www.geocities.jp/kinomemocho/hamono_hasami.html
しかし、博多鋏と同様、いろんな
職人による鋏があるようですな。

そんな中で、
高柳商店(←我が師匠)の博多鋏
と同等に評されているのが
牧瀬本種子鋏製作所の種子鋏です↓
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=228332
http://www.craftsaloon-en.com/hasami.html
で、この「種子鋏」の特徴が
「ねり」と呼ばれる
刃にひねりを入れている
ところにあります↓
http://blog.livedoor.jp/tanegasima/archives/25370891.html
http://teshigoto.jp/excellent_article/201002.html

確かに博多鋏には
「刃をひねる」という概念はありません
しかし、高柳師匠がいうには
「研ぎの段階で、刃がプロペラ型
になるよう意識して削るんよ」
そうすることで、博多鋏の刃には
種子鋏のような急激なひねりではなく
微妙なカーブが入っているんですな。

「そういう削り方ができんかった
昔の職人が、帳尻を合わせるため
使っていたのがこの棒ったい」
と笑っておりました。
posted by アサケン at 17:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 鍛冶修業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする