2012年05月22日

バフ作り(3)

さて、またまた昨日の続きです。
4枚の馬糞紙を貼りあわせた
ところまでいきましたな↓。次に
http://uinversal.seesaa.net/article/270779240.html
グラインダーの軸を通す用に
作られたプラスチックの管を
バフの中心部分に開けた穴を
ヤスリで少しずつ削って
ピッタリとはめ込みます。
20521-02.jpg
プラスチックの管は最終的に
瞬間接着剤でバフにはめ、
いったんグラインダーにセットし
10分ほど乾くのを待ちます。
20521-03.jpg
ちなみに、ここで決めたバフの上下は
これからずっと守らなければならない
上下となります。理由は
いくらグラインダーの軸にあった
プラスチックの管とはいえ
下には絶対隙間ができますので
その分を考慮しないと
完全な回転円を描けないからです。
(分かるかなあ、
分かんねえだろうなあ)
20521-04.jpg
で、グラインダーを回しながら
粗めの砥石でバフ面となる部分を
削りながら回転軸に対して
平面平行に仕上げていきます。
(これがまた、難しいんだなあ)

最後は以前コチラ↓で紹介した
http://uinversal.seesaa.net/article/263556727.html
作業と同様にバフ面にニカワを塗り
エメリー粉をまぶして出来上がり。
20521-05.jpg
「おお、お前さんもとうとう
自分用のバフを
持つことになったか」と師匠。
「いやいや、僕専用じゃありませんよ
師匠も使ってくださいね」と俺。
「ははは、いい出来やし
そうさせてもらうわ」と師匠。
美しい師弟愛に包まれた
1日でありました。


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2012年05月20日

バフ作り(2)

さて、昨日の続きです。
まずは馬糞紙を35.5cm直径の
円型に切り抜きます。しかし、
馬糞紙は4mmの厚さを持ちますんで
いかに紙とはいえ大変な作業。

そこで登場するのがこれ。
「ぐるぐるカッタ〜」
(↑ドラえもん風に読んで)
先日申しておりました
もう一人の弟子が作った道具で、
L字型の棒の角のところに
刃がついており、逆側の辺の
先端にある穴に釘を入れて
ぐるぐる回せば35.5cmの円が
切り抜けるというシロモノ。
20520-01.jpg 20520-02.jpg
で、これで4枚切り抜くのですが、
買ってきた馬糞紙は1枚で
ぎりぎり4つの円を
切り抜くことができました。

次に円の中心に今後は
直径2.5cmの穴を開けるのですが、
ここで登場するのが
「くるくる穴あけマシ〜ン」
(またまた↑ドラえもん風に読んで)
これは師匠が
「うちに昔いた職人が作ってた
樽に穴を開ける道具やんね」
と申しておりました。
まずは中心の穴をドリルで広げ
20520-03.jpg
そこを中心にして先ほど道具を刺し
くるくると回し押し込めば
穴がか〜んたんに、ほがせるという。
ほんと先人の道具は
優れものであります。
20520-04.jpg 20520-05.jpg
で、切り抜いた4枚の円を
「にかわ」で貼りあわせるのですが。
「にかわ」とは↓(下の写真のもの)
http://www.babaken.co.jp/babaken_nikawa.htm
日本では昔から日本画や工芸品
の世界で使われてきた
接着剤のことですな。
20520-06.jpg 20520-07.jpg
粉末のものを水に入れ加熱し
ジェル状にしたものを使用します。
歯ブラシでいっきょに馬糞紙に塗り、
(乾燥、温度差で凝固が速いんで
スピード感が求められます)
ズレのないよう4枚を貼りあわせます

そして、乾いていくうちに
反りなど入って曲がらないよう
厚い板と板の間にはめて
上から重しをのせ、一週間。
20520-08.jpg
ちなみに重しには
先日コチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/267987226.html
で紹介した、結局使わなかった
昔の金敷を利用させていただきました
いや〜、この上ない重さで
一週間後、ぴったりと真っ直ぐ
貼り合わさっておりました。
20521-01.jpg
さて最後は、仕上げの作業。
この続きはまた明日。


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2012年05月19日

長崎屋紙店(バフ作り1)

念のため、ときどき記しておこうと
思っているのですが。
あれはもう4年ほど前。
僕は突然、博多でただ一人残る
博多鋏鍛冶職人・高柳晴一さん
のもとを訪ね、なかば強引に弟子入り
させていただきまして↓
http://uinversal.seesaa.net/article/163652361.html#more
いつか、この手で
ユニバーサルデザイン博多鋏を
完成させたいという
夢をみているのであります↓
http://uinversal.seesaa.net/article/163751811.html
http://uinversal.seesaa.net/article/213198373.html
http://uinversal.seesaa.net/article/221464899.html
で、週末だけ工房に入らせてもらい
鍛冶作業をやらせてもらってて、
これを勝手に週末鍛冶修業と
呼んでおる次第です。

と、そんな中、僕が現在
取り組んでおるのは「バフ」作り。
バフとは、研磨機のひとつで、
最終段階で使用する
グラインダー型紙やすり
といったものでしょうか。
以前、研磨機については
コチラ↓でご紹介させていただいた
http://uinversal.seesaa.net/article/202480662.html
ことがありますのでご参照ください。
こういう道具作りも職人の
重要な仕事のひとつとなるんですな。

「このバフも20年近く
使いよるっちゃけど、
もうボロボロやんね」と師匠。
(下の写真が師匠の使っているバフ)
20519-01.jpg
「そーですか。じゃあ僕に
新しいやつを作らせてくださいよ。
勉強にもなりますし、
まず何をすればいいんですか?」
「じゃあ、なるべく分厚い
馬糞紙買うてきて」
「馬糞紙?」とは、まあコチラ↓
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E9%A6%AC%E7%B3%9E%E7%B4%99/
をご参照ください。

しかし、この馬糞紙が
探せど探せど、今風な文房具店や
画材店には見つかりゃしません。
で、最後に辿りついたのがこちら。
川端商店街の中にある
紙を中心に置く文房具屋さんで、
70年以上の歴史をお持ちとのこと。
20519-02.jpg
「すみません、昔、馬糞紙って呼んでた
厚手のボール紙のようなものを
探してるんですが」と尋ねる俺。
「ありますよ」とお店の方。
「ほ、ほんとですか。いや〜助かった
(さすが、今風じゃない
文房具屋さん! ←心の声)」
20519-03.jpg 20519-04.jpg
それもなんと、4〜5種類ほどの
厚みの違うものが揃っている
というじゃありませんか(感涙)。
で、一番厚い4mmのものを購入。
一枚498円いたしました。
20519-05.jpg
早速、工房へ持っていき
師匠に見せると
「おお、これこれ。でも、これ
昔の馬糞紙とは違うっちゃんね
なんか水に溶けやすいんよ」とのこと
ネットで調べてみると↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB
「黄ボール」っていうらしいですな。
なるほどね。
時代の進んだ今風なものが
店にしても物にしても
全てが良くなっているって
限んないのですね。

まあ、いいや。
それではバフ作りを開始しましょ。
(次回に続く)

ちなみに、この店の公式HPはコチラ
あと、店の入口部分には段差なし。
しかし通路がちと狭いので
車椅子での入店は辛いでしょう。


「長崎屋紙店」鑑定結果:68ユニバ
福岡市博多区上川端町9-165

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2012年05月01日

金敷

これ、師匠んちの金敷なんですけど
20501-01.jpg
金敷(カナシキ)とは以前コチラ↓で
http://uinversal.seesaa.net/article/215103789.html
紹介したことがありますので
よろしければ、そのときの記事を
ご参照ください。
まあ簡単にいうと
料理でいうまな板のようなもん、
鉄の形成台ですな。

で、これがもう最後に焼入れをして
約20年ほどたっているらしいのですが
するってえと作業面の焼きが戻って
柔らかくなってしまっているとのこと。
それで、作業面の中央部分が
少々凹みぎみになっていたんですよね

ほんでもって、いよいよ鍛接が
しにくくなってきたということで、
昔使っていたという別の金敷を
師匠が工房奥からひっぱり出してきて
「こいつと交換しよう」と言い出しまして
その作業を手伝うことに。
20501-02.jpg 20501-03.jpg
まずは、こいつもまた、作業面の
中央部分が凹んでおったので
まずは頭部分を赤らめて、
作業面の両端を大槌で打ち
きれいな湾曲をつけなおしまして
3人がかりで焼きを入れなおし
交換し、しばらく使っていたのですが…
20501-04.jpg 20501-05.jpg
どうも、これが、「しっくりこない」と
また師匠が言い出しまして
結局、元使っていた
金敷と入れ替えることに。

ということで先の画像にあるように
こっちもまた頭をキレイな湾曲に
形成しなおし、焼入れをするのですが
この焼入れが大変な作業なんですよ。
これほどの大きさの鉄の焼入れとなると
昔は川原でやっていたというほど
大量の水が必要なんですね。それを
この狭い工房内でやるんですから。
20501-06.jpg 20501-07.jpg
まずはホースの水を出しっぱなしにして
水を入れた盥を何個も準備して、
水桶に金敷を投げ込んだと同時に
3人で一挙に盥の水をぶっける
といった具合で遂行します。
20501-08.jpg 20501-09.jpg
ほんでもって画像を見てもらえれば
分かると思うのですが、
金敷は全部鉄で出来ているのですが
地中に埋まっている部分がかなりあり
その総重量は相当なものなんです。
20501-010.jpg 20501-011.jpg
針金で吊るして、棒で肩にかつぎ
なんとか移動させ、無事、
焼入れを終了することができました。
20501-012.jpg
あとは本体を地中深く埋め込んで
「はあ、これであと20年は大丈夫や
しかし、あいたた」
と腰を押さえる師匠。
「し、師匠―!」
どうやら腰をやっちまったみたいです。
「金敷は20年大丈夫でも
師匠が大丈夫じゃないやない」
と、とりあえずは笑い事で済ませる
レベルではありましたが。
ところで、約20年に1度の
この作業を見れたのは貴重でした。
ひとつひとつ、
見せてくれているんでしょうか…
ありがとうございました。


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2012年04月10日

博多鋏('12年4月・5寸・4日目)

さて、前回コチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/261903373.html
で紹介していたとおり、今回が最終日。
バフによる研磨でピカピカに仕上げて
4mmの針金でカシメて
ようやく完了しいたしました。
20410-01.jpg 20410-02.jpg
問題となっておりました目釘穴も
釘がいつもより太いので
つぶした面が大きく覆いかぶさり
ぜんぜん分からなくなりました〜。
帳尻合わせも技のひとつですよ
ハハハハ。
20410-03.jpg
ここで、ちょっと道具の紹介をば
鋏の研ぎ機は以前、コチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/202480662.html
で紹介したことがあるのですが
3機のグラインダーを
使っているんですけど。
今回、そのうちの最終研磨機、
バフのメンテナンスについて
ちょっと記しておこうと思います。
20410-04.jpg
バフとは分かりやすくいうと
回転する紙ヤスリのようなものですな
師匠は1日の作業が終了すると
いつも明日使うバフの表面に
膠を塗り、新しいエメリー粉を
付けて帰ります。
20410-05.jpg 20410-06.jpg
エメリー粉とは、鋼玉と磁鉄鉱
との混合物で研磨材として
用いられる粉のことですな。
現在、その粒子は#220のものを
使っているのですが、最近、
#300弱ぐらいのものがいいかも
と思っていると申しておりました。
20410-07.jpg
ふーん。
今後、僕が独立することが
あるかどうだか分かりませんが
覚えときま〜す。

ちなみにこの「エメリー粉」
楽天市場にございました。
右の写真をクリックすると
購入できるサイトにリンクします。
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価格:5,806円(税込、送料別)


って、誰が買うねん!

ところで、ネットでいろいろ
検索していたところ。
師匠が映ったYouTubeに
出くわしたではありませんか。

へ〜、こんな番組あったんだ。
映像中、
「後継者は?」と尋ねられて
「生徒のような者が2人います」
って答えているのですが
そのうちの一人が僕のことですな(笑)

で、そーなんですよ。
もう一人いるんですねえ。
一昨年ほど前に女性がまた一人
転がり込んできまして。
ということで、僕のほうが
いちおう兄弟子ですな。
ハハハ、どーなりますことやら。
しかし、もう誰も来ないでね。
工房狭いんで(笑)

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2012年04月02日

博多鋏('12年4月・5寸・3日目)

さて、現在製作中の博多鋏。
前回の様子はコチラ↓をご覧ください
http://uinversal.seesaa.net/article/259110456.html
20402-1.jpg 20402-2.jpg
で、前回申しましたとおり
今回、ちょっと手こずっておりまして
普段ですと3日で1本仕上げている
ハズなのですが、今回は3日目を
終えた段階でようやく
焼入れをし、最終的研磨の途中、
荒削り状態といったところで終了。
20402-3.jpg 20402-4.jpg
次の4日目でバフによる研磨で
ピカピカに仕上げて
カシメて完了と予定しております。
が、問題はその目釘穴ですな。
ミスっていつもより大きく
歪に空いてしまっております。
20402-5.jpg 20402-6.jpg
これを、いつもは3.3mmの針金を
目釘としカシメているのですが
今回は4mmの針金を購入してきて
これにてカシメる予定です。
上の針金の写真、
左側が4mmで、右側が3.3mm
なのですが、分かるかなあ
微妙でしょう。

さてさて、次回にて無事、
鋏が完成しますように!


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2012年03月21日

博多鋏('12年3月・5寸・2日目)

さて、現在製作中の博多鋏。
前回の様子はコチラ↓をご覧ください
http://uinversal.seesaa.net/article/256987205.html

いや〜今回、ちょっと手間取ってます
普通2日目を終えたこの段階では
焼き入れまでを終了しているのですが
今回、生研ぎ、そして
目釘穴あけ・菱打ち、までを
ようやく終了した段階で時間切れ。
ちなみに鋏の製作工程は
以前に紹介したコチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/189391765.html
の記事などをご参照ください。
20320-1.jpg 20320-2.jpg
それが、ちょっと鍛接を失敗しまして
地金の思ったより先の方に
鋼を付けてしまったんですね。
そうすると左右の刃の鋼の位置が
違っているということになり。
そうすると、一方の固い部分が
もう一方の柔らかい部分に
食い込んでくるようになるんですね。
これを鋏鍛冶職人用語で
“カニ喰い”状態っていうんですけど
こうなるともうその鋏は
すぐに使えなくなっちゃうんですよね
20320-3.jpg 20320-4.jpg
ということで、目釘の位置を
変えることで、その擦り合わせを
調節しようとしたこところ
なかなか、適切な場所に
穴を開けることができなくて
何度も失敗しているうちに
穴が大きく、歪な形になってしまった
という訳です。
20320-5.jpg
というのも、今回、鍛接を失敗したのが
そもそもの原因で、これが
大きく響いている訳ですが。
これが、なぜ起こったのかと申しますと
火床(ホド)の調子が悪くって
火が素材(鉄)に均等に
まわらなかったんですよねえ。

何年かに一度、火床は分解して
メンテナンスを施すのですが。
それを師匠が何週間か前に行って
送風口の位置がほんの少し上向き
加減になっちゃったみたいでして。
20320-6.jpg 20320-7.jpg
あと耐火レンガの間を埋める
耐火土もなくなったとかで
微調節も思うように進まず……
もうね、鍛造や研ぎだけが
鍛冶屋の仕事じゃないんですよねえ。
道具や設備の調整もできんと
満足な品は出来上がんない
のですよ。はあ〜。


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2012年03月11日

博多鋏('12年3月・5寸・1日目)

さて、今年の僕の鍛冶修業の目標は
“1本でも売れる鋏を造る”
と、勝手に決めておりまして
今回は久しぶりノーマルな博多鋏を
造ることにした次第。

まずは下の写真。
5寸と4寸5分の鋏の設計図
でございます。
師匠のお父様が残されたものでして
寸法や重量が記されております。
20311-01.jpg
で、今回は全長5寸の鋏を造ろうと
考えているので、下側に記された
大きいほうの鋏がそれになります。

師匠のところには現在
鋏の地金となる素材は2種類あって
5寸より小さいサイズ鋏は
幅4分、厚み2分の地金棒を
20311-2.JPG 20311-3.JPG
5寸より大きいサイズの鋏は
幅4分5厘、厚み2分の地金棒を
20311-4.JPG 20311-5.JPG
使っております。

5寸の鋏の場合はその素材をだいたい
3寸6分(約11cm)使って、うち
1寸5分をホに、2寸1部をアシに
使用して、
ホは2寸5分に、アシは5寸に
伸ばして、片方を造っていきます。
で、これを2本組み合わせて鋏にすると
全長5寸、全重量10匁(37.5g)の鋏が
出来上がるといった感じです。
(ちなみに5円玉1つの重さが1匁)

これを正確に造り、ほんの
少しの鉄も無駄にしないのが
鍛冶屋としての誇りなんですねえ。
決して、てきとーに造って、
ちょっと大きめになっちゃったら
削ればいいじゃん
なんて考えていないんですよ。

ようやく僕もその域に……
とまでは言いませんが
無駄を出すことは恥と考えれる
余裕は出てきたかなあ。
と、今回も火造りまでを終え
1日目を終了。
20311-6.jpg 20311-7.jpg
これからまだまだ1本造り上げる
までには様々な困難が
待ち構えておりますが。
20311-08.jpg 20311-9.jpg
ああ、無事、売れる鋏が
出来上がりますように!


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2012年01月09日

ダマスカス博多鋏('12年1月・4寸・3日目)

さて、前回コチラ↓にて紹介した
http://uinversal.seesaa.net/article/241288098.html
現在、製作中の鋏。
ようやく完成いたしました。というか…
完成はサグラダ・ファミリアのごとく
とでも申しましょうか。
20108-1.JPG 20108-2.JPG
とりあえず、出来としては
これまでの作品のなかでも
トップクラスのものといえるのでは
なかろうかと思っているのですが
(下の写真は過去の作品と
ともに並べたもので
上から5.5寸↓、
http://uinversal.seesaa.net/article/202480662.html
5寸↓、4寸となっております)
http://uinversal.seesaa.net/article/163652361.html
肝心なダマスカスならではの
波紋が……
20108-3.JPG
いやいや、もしかして
鋼と地金の微妙な違いによる
波紋ですから、もっとピカピカに
仕上げないと分からないのでは
なかろうかと、グッデイに行って
「ポリマール」なる超微粒子研磨剤と
ツヤ出し剤をふくんだ研磨布
なるものを買ってきて↓
http://www.koyo-sha.co.jp/general/polimall.html
ゴシゴシ磨いてみました。
20108-4.JPG
すると、微妙に
輝きがニョゴニョゴと
見える部分がでてきたような
でてこんような……
20108-5.JPG 20108-6.JPG
まだまだ、磨いてみるつもりで
こりゃあ、完成するのは
いつになることやらって感じです。

ん〜、まあ、1本目なんて
こんなもんでしょう。

しかし、負け惜しみのように
聞こえるかもしれませんが
今回の第一の目的は
前々回、このように↓
http://uinversal.seesaa.net/article/238519282.html
造ったことを説明したように
いわば廃材の鉄から
生まれた鋏であることの喜びです。
20108-7.JPG
これは鍛冶屋の大きな魅力のひとつ
と言えるものだと思っていて。
鍛冶屋は死んだ鉄を
再生させることが出来る!
それはエコ・デザインである
と思っているんです。

これまでに
コチラ↓で紹介した鋏のように
http://uinversal.seesaa.net/article/230066069.html
ひとりひとりのために造れる
エクスクルーシブ・デザイン的魅力と

コチラ↓で紹介した鋏のように
http://uinversal.seesaa.net/article/163751811.html
みんなのために造れる
ユニバーサル・デザイン的魅力と

あわせて覚えてていただけますと
嬉しく思います。

ちなみに上で紹介した
「ポリマール」
楽天市場にございました。
下の写真をクリックすると
購入できるサイトにリンクします。
(アフィリエイトです)


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2011年12月19日

ダマスカス博多鋏('11年12月・4寸・2日目)

これ師匠んち。
看板もな〜んにも出ちゃあいません。
1人でコツコツ作っていますんで
今、注文が来ても、1年半ぐらい
待ってもらわないと
って師匠言ってたなあ。
そう、バンバンお客さんに来られても
…って感じなんだと思います。
11217-7.jpg 11217-5.JPG
それでも、玄関部分は店のように
なっておりまして。
まあ、在庫はぜんぜんないのですが
昔、イベントか何かで使ったような
パネルがいくつか
置かれているんですよねえ。
その中に、鋏制作の行程図
のようなものがありましたので
ちょっと資料として
写真におさめた次第。
11217-6.JPG
さて、前回、コチラ↓にて
http://uinversal.seesaa.net/article/238519282.html
紹介した現在制作中の鋏。
2日目を終え焼き入れまでを完了する
上の行程図でいくと
上から5段階目ぐらいかなあ。
ということは残りあと2段階か
と思われるかもしれませんが
いやいや、ここからが
本研ぎになるんですけど
最も神経を使うところに
なるんですよねえ。

本日のポイントとしては
“焼きなまし”の作業ですな
鍛造した後、一度、鉄を赤らめて
ゆっくり冷やしてやらないと
えらい全体的に固くなっちゃって
アシを曲げられなくなったり
目釘穴を入れられなくなったり
するんですよねえ。
特に今回は鋼と地鉄の
2種類の鉄をミックスして
作っているんで
「よーく、焼き鈍ししとけよ」
と師匠に助言され
そうした次第。
11217-1.JPG 11217-2.JPG
生研ぎをし、目釘穴と菱紋を入れ
焼き入れをし、本日は終了。
焼きもいい具合に入りました。
11217-3.JPG 11217-4.JPG
さて、次回はいよいよ本研ぎだ。
波紋、現れるか!


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2011年12月04日

ダマスカス博多鋏('11年12月・4寸・1日目)

大昔、ダマスカス鋼という
伝説の金属がありまして↓。
http://www.nittech.co.jp/M99/M9906.html
それは、もともとインドのウーツで
精錬された「ウーツ鋼」が、
シリアのダマスカス地方に渡り
刀剣などに利用されていたところ
ダマスカス地方で製造された刀剣は
折れず・曲がらず・よく切れ・錆びない
という評判がヨーロッパ各地で広まり
「ダマスカス鋼」という呼び名で
世界に広まったっちゅう話です。

それが、いつの間にかその製造法は
失われ、現代の科学技術をもっても
再生することができずに
伝説の金属として
語り継がれているという
ほんまかいなっちゅう話です。

今、わずかに残るその鋼材は
イギリス大英博物館等で
保存されている!らしいのですが。
その金属の見た目の特徴のひとつが
異種金属が混じり合ったような
まだら模様が入っていると…。

で、そのダマスカス鋼を模し
硬さの違う鉄を重ねて
折り返していき、その質感の差を
模様として浮かびあがらせた
“だけ”のものを、まあ、観賞用に
刃物とかに使い楽しんでいるのが、
現代のダマスカス・ナイフとか
ダマスカス・包丁とか
呼ばれているものですな。
11204-20.jpg

ということで、今回挑戦しますのが
ダマスカス博多鋏でございます。

ここのところ、しばらく鍛冶日記を
紹介していなかったのは
ずっと失敗していたんですね(涙)。
で、ようやく今回、地切りまで
辿り着けましたので、やっと
ご紹介させていただきます。

師匠のところで、硬さが違うであろう
古材(鉄)をいただく。下の写真で
短いのが鋼と思われるヤスリで、
長いのが地鉄と思われる
何か分からん鉄の棒ですな。
11203-1.JPG 11203-2.JPG
両材料とも熱し赤らめ、まずは、
ヤスリの方を適当な大きさで切り出し
鋼の欠片というかチップというか
そのようなものを準備しておきます。
次に、鉄の棒のほうの先端を
ちょっと平たい角柱状に形成し
切り込みを入れ、くの字に曲げます。
その間に先ほどの鋼のチップを挟め
ほう砂をふりかけ、いっきょに鍛接!
11203-3.JPG 11203-4.JPG
その後、また棒先を角柱状に整え
くの字に折り曲げ、今度は
何も挟めずにそのまま2つ折で鍛接!
と、この作業を7〜8回繰り返すことで
地鉄と鋼の層が
3層、6層、12層、24層…
と増えていくわけですな。
11203-5.JPG 11203-6.JPG
これを「折り返し鍛造」と申します。
日本刀の世界で行われる
「折り返し鍛錬」↓と
http://www.katanakazi.com/newpage34.html
作業的には一緒ですな。

で、ここ何回か失敗していたというのは
この折り返し鍛造です。
全ての面をきちんとくっつけ合わせる
のが、なかなか難しくて…
後々、鋏の形状に近づけていく段階で、
くっついてない部分が表れたりして。
そこから、またあらためて
くっつけようとすると、
強く打ち付けなくてはならないので
素材はどんどん細くなっていくは……
この絶望感、無力感が
分かるかなあ、分かんねえだろうなあ
11203-7.JPG 11203-8.JPG
それでもなんとか
第一段階を終えたものがこれ。
次回はこの地切りした素材の
刃となる部分に本来の鋼を鍛接し
焼き入れですな。
11203-9.JPG 11203-10.JPG
さーて、波紋が
浮かび上がることを祈る!!


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2011年10月12日

真左利き用博多鋏('11年10月・5寸・3日目)

さて、前回、コチラ↓にて
http://uinversal.seesaa.net/article/226054518.html
紹介した現在制作中の鋏。
3日目を終えようやく完成いたしました
11009-10.JPG 11009-11.JPG
どうでしょう。自分ではなかなかの
出来だと思っているのですが。
以前、コチラ↓にて紹介した
http://uinversal.seesaa.net/article/163652361.html
初期の作品と比べると、かなり
削りが上達しているんですけど
分かるかな?分かんねえだろうなあ?
11009-12.JPG
あと、上の写真、見比べてほしいのが
右が以前の作品で右利き用
左が今回の作品で左利き用です。
刃の向きが逆になっております。
分かるかな?これは分かるでしょ?

以前、コチラ↓で説明したとおり
http://uinversal.seesaa.net/article/224024871.html
なるほど、僕は右利きなんで
右手でも左手でも切りにくいですな
一切り目はさほど感じないのですが
二切り目以降、中心が定まらない
というか、切り口がグニャグニャ
になってしまうんです。

んん、これを左利きの
大人と子供に使ってもらって
感想を聞きたいんだけどなあ。
近くにおらんなあ。
まっ、そのうち現れるでしょ。

さて、今回活躍した道具の紹介ですが
これ“足曲げ型”と申します。
持ち手の部分を曲げる道具ですな。
使い方としては、写真のように
ヤットコで型に足の先端を固定し、
(ヤットコとは、まあ
和風のペンチのようなものですな)
一挙に、力尽くで曲げます。
11009-13.JPG 11009-14.JPG
この“足曲げ型”なんですけど
師匠の親父さんの代の職人さんが
作ったものらしいのですが
「この微妙な美しい曲線が
なかなか出せんちゃんね。
当時の職人さんはすごいと思うよ」
と師匠はおっしゃっておりました。
そんな歴史あるフォルムを
私めなんぞの鋏に
使わさせていただいて
ほんと恐縮です。

遥かなる先輩!
ありがとうございました!!


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2011年09月15日

真左利き用博多鋏('11年9月・5寸・2日目)

さて、前回、コチラ↓にて
http://uinversal.seesaa.net/article/224024871.html
紹介した現在制作中の鋏。
2日目を終えた段階のものがこれ。
10915-1.JPG 10915-2.JPG
「焼入れ」を終え「本研ぎ」の
途中といったろころですな。
鋏の制作行程の説明は
以前に紹介したコチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/189391765.html
の記事などご参照ください。
10915-3.JPG 10915-4.JPG
で、今回のこの左利き用の鋏。
苦労して苦労して苦労して
なんとか形になってまいりました
今のとこいい感じなのでは
ないでしょうか。
いつものように次回の
3日目で仕上がりそうです。
10915-5.JPG
こうご期待!

さて、今回紹介する道具はこれ
なんだか、鉄の小さな杭
のような道具ですが、
10915-6.JPG 10915-7.JPG
先っちょのほうを見ますと
「×」と「=」の形になっております
そうですあの博多鋏の特徴である
「菱紋」と「二の字」といわれる
マークを打ち付ける道具です。

「そういえば師匠、この印には
なんか意味があるんですかねえ」
と俺。

「なにやら、魔除けの印って
昔に聞いたことがあるんだけど
定かではないんよなあ。
お前さん調べてくれ」
と師匠。

がってんでい! ということで、
とりあえずネットで
「魔除け」「模様」「博多」
をキーワードに検索したところ
ヒットしたのがコチラ↓。
http://www.awai.jp/hakataori/
「博多織り」ですな。
この柄の提案者が
承天寺の聖一国師というお人で、
謝国明と深い間柄をもつ方
であることは言うまでもないでしょう
(謝国明と博多鋏の関係は
以前に紹介したコチラ↓を)
http://uinversal.seesaa.net/article/163652361.html
10915-19.jpg 10915-20.jpg
で、博多織献上柄とは
「独鈷(どっこ)」
「華皿(はなざら)」
「親子縞」「孝行縞」
という4つの柄が
1セットになっているんですけど。
この中の「独鈷(どっこ)」
という柄が独特でして。
「独鈷」とは密教にて煩悩を払う
法具とされているものなんですね
(右上写真がそのもの
剣の部分が3本になったり
いろいろ形はあるのですが)
その独特な形をデフォルメした
のがこの模様らしいのです。

これが、日本刀の世界でも
「独鈷」というものは
刀身に様々なデザイン化された
ものが古くから彫刻されて
いたりするんですよねえ。
10915-14.jpg
10915-15.jpg
刀剣用語として
使われているくらい
定番の彫りものなんです↓
http://www.weblio.jp/content/%E7%8B%AC%E9%88%B7

それを刀鍛冶師でもあった
安河内卯助が簡略化して
打ち込んだのではないかと。
10915-8.JPG
まあ、これはあくまでも
僕の推理なのですが、
まず間違いないんじゃないかなあ

魔除けの印といえば
日本はおろか世界中に
いろいろあると思いますが
代表的なものはこれらかなあ

まずは「セーマンドーマン」↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3
10915-17.jpg
左のものは
「安倍晴明判紋」↓や
http://park17.wakwak.com/~tatihana/onmyou/yougo_folder/kamon.html
「五芒星(ペンタグラム)」↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E8%8A%92%E6%98%9F
とも呼ばれていますね
右のものは
「九字紋」↓とも呼ばれています。
http://gunsoh.fc2web.com/syugyo-2.htm

あと下の印は「籠目(かごめ)紋」↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%A0%E7%9B%AE
10915-12.jpg
これは「六芒星(ヘキサグラム)」や
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E8%8A%92%E6%98%9F
「ダビデの星」↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%93%E3%83%87%E3%81%AE%E6%98%9F
なんて呼ばれ方もしていると思います

あとキリスト教のクロス
「十字」↓もそうだと思うのですが
http://www.kitombo.com/mikami/0924.html
これからの形に共通して言えることは
多くの目を持つことだと言われています
“目”というのは
“籠目”とか“網の目”とか
言うところの“目”ですな。

妖怪や悪魔など邪悪なものの多くは
人間の目を見て呪いや魔法を
かけるって思われてるらしくって
「メドゥーサ」↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%82%B5
10915-16.jpg
とかその典型ですな。
その対策のため、
多くの目を擬似的につくって
妖怪を惑わすといった
作戦があるようなんです。

という意味でも
この博多鋏のマークにも
多くの目を作ったのでしょう
というのが僕の推理です。

いかがだったでしょう。
なかなかいい線いっている
のではないでしょうか?

と、ぼんやり博多鋏を眺めていたら
ハッと気好き、メモをとった。
「××=」を微妙に重ね合わせると
「籠目紋」が現れたではないですか!
10915-13.jpg
安河内卯助の笑い声が
聞こえたような気がした。


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2011年09月03日

真左利き用博多鋏('11年9月・5寸・1日目)

「今度は何を作るとや?」と師匠。

「実は左利き用の鋏を作ってみようかと
考えているんですよ」と俺。

「へ〜。しかし、
博多鋏は左右対称の形やから
持ち手の部分は右利きも左利きも
関係なく使えるんぜ。
お前さんが言いよるのは
“真左利き用”やろ」と師匠。

「“真左利き用”?
って言うんですか、そうなんですよ。
イメージしているのは
右利き用の鋏をそのまんま
鏡で映した形のものです。
だからクロスもいつもの逆にする。
それが本来ですよね」と俺。

「しかしなあ。
ずっと右利き用の鋏を
使い続けている左利きの人は、
“真左利き用”を使いにくいと
感じたりするんよ。
普段、鋏は無意識のうちに
摺り合わせるように使っとってな
それがいつもの逆になるけん
そう感じるんやろうなあ。
まあいいけど、作ってみればいいさ。
俺も昔、一度チャレンジした
ことがあるんやけど
よう作らんやった(笑)」と師匠。

ということで師匠も断念した鋏造りに
チャレンジした次第(笑)。
いやいや、師匠レベルの精密な鋏は
そりゃあ何十年もかかって
到達したものですから、
それと同じレベルの左利き用の鋏を
作ろうとしたなら、少なくとも数年は
かかるっちゅう話なんですけどね。
今の僕レベルのなんちゃって鋏は、
右も左も関係なく
ヘタクソっちゅう訳です。

と、なにわともあれ、まずは火造り。
10902-1.JPG 10902-2.JPG
いや〜、難しゅうございました。
ほんと全ての行程が逆なんで
場合によっちゃあ、右手と左手を
クロスして鍛造しなければ
ならなかったりするんです。
10902-3.JPG 10902-4.JPG

で次に荒削り。
10902-5.JPG 10902-6.JPG
ひえ〜、難しゅうございました。
いつもは右手に素材を持って
削るのですが、
同じ感覚で削ろうとすると
左手で素材を持つ必要があるんです。
10902-7.JPG 10902-8.JPG
ちなみに前々回造った創作鋏の
同段階のものがコチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/206724054.html
ねっ、構造が逆になってるでしょ。

しかし、なるほどねえ。
左利き用の鋏は、
左利きの職人のほうが
作りやすいものなんだねえ。
こりゃあ発見でした。

まあ、なんとか1日目を終了。
と、ここで、この日活躍した
道具紹介ですが、本日はこれ。
10902-11.JPG
鍛造用の鎚ですな。
前回、コチラ↓で紹介した
http://uinversal.seesaa.net/article/221464899.html
細工用の鎚とは迫力が違いますが
やっぱり、先端のほうに
重心が置かれています。
鍛冶屋はこの鎚も自分で造るんですね
これは師匠の親父さんが
造られたものらしいのですが。
ああ、いつかは俺も
自分用の鎚が欲しいのう。ちなみに
火箸は以前コチラ↓で紹介した
http://uinversal.seesaa.net/article/184531802.html
自分用のものを
使っているんですけどね。

さてさて、真左利き用博多鋏。
どうなりますでしょうか。
10902-9.JPG 10902-10.JPG
ちなみにコチラ↓のHPに
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2004/05/post_10.html
左利き用鋏についての
記事がありました。
フムフム、参考になるなあ。


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2011年08月21日

ユニバーサルデザイン鋏('11年8月・5寸・3日目)

さて、前回、コチラ↓で紹介した
http://uinversal.seesaa.net/article/217300115.html
ユニバーサルデザイン鋏、
3日目を終了しついに完成しました。
ぱっと見、鋏には見えないでしょう。
10819-1.JPG 10819-2.JPG
まずは、筆箱とか、バッグ、
背広の内ポケットにも、
入れておきやすそうな鋏を
作りたかったんですよ。

ということで指を入れる
輪っかを無くしたんです。
とすると、どうやって開くのか
バネを仕込んで自ら開くようにした。
使う人は、それを閉じるだけでいい。
10819-3.JPG 10819-4.JPG
もともと剪定鋏では
使われていた方式ですな。
それを文具用の鋏に取り入れ、
スマートにした感じ
といったところでしょうか。

人によっては
こういう手の動きの鋏のほうが
使いやすいって方も
いると思うんですよ。
10819-5.JPG 10819-6.JPG
いかがでしょう。
しかし、実は、これ……
あんまり切れません(涙)。
開きを大きくするために、
目釘穴の位置をより手元に持ってきて
刃もちょっと外側につけているんです。
このことによって、従来の鋏の
構造(削り方)とぜんぜん違った
ものになり、それをほとんど
手探り状態で完成まで
持ってきたものですから……

「しかし、お前さんは
最も難しい鋏を造ろうとしよるよ。
今回でいろいろ分かった
問題点を解決して、精度を高めれば
売れるよ、この鋏」
と師匠には言っていただけました。
よっしゃああ、がんばんべえ。

さて、本日活躍した
鍛冶道具紹介ですが。
これかなあ。細工用の槌。
10819-7.JPG
この小さな槌で、最後
アシの部分を曲げたり、
刃先を微妙にひねったりして
最終的調節を行います。
大工用の金槌とは違い
鍛冶用のものは両面を使いません。
そして、重心が先の方にあります。
それは餅つきの杵のような
バランスのものなのですが、
たぶんこのほうが、打撃面の微妙な
傾きを調節しやすいんだと思います。
鍛冶の槌にはあと
鍛造用の槌もあって、
それはまた次の機会にて
ご紹介させていただきます。


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2011年07月30日

ユニバーサルデザイン鋏('11年7月・5寸・2日目)

これ、現在、制作中の鋏。
10730-1.JPG 10730-2.JPG
前回の記事はコチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/215103789.html
2日目となる今回は、
荒削り(生研ぎ)、
焼き入れ↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%BC%E3%81%8D%E5%85%A5%E3%82%8C
焼き戻し↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%BC%E3%81%8D%E6%88%BB%E3%81%97
を終えた状態のものがこれ。

今回、活躍した工具を
ひとつあげるとしたらこれかなあ。
10730-7.JPG
電気ドリル。
いつもは目釘穴を開けるとき
ぐらいにしか使わないんだけど。
今回は、ちょっと特別なところを
削らせていただきました。
その場所というのが、
目釘穴近くのアシの内側。
これが、今回の鋏の
重要ポイントですな。
10730-3.JPG 10730-4.JPG
この穴に、
先日100円ショップで購入した
ラジオペンチから分解した
バネを差し込んでと。
10730-5.JPG 10730-6.JPG
まあ、右上のような
状態の組み立てを考えてる訳です。

さーて、次回はいよいよ
3日目(最終日)。
どのような鋏が出来上がるか
お楽しみに〜。

と、ここでちょっと
お知らせをひとつ。
先日の27日。
秀巧社印刷の関連会社
スペースキューブから電子マガジン
「MADE IN…」↓
http://monokoto-madein.jp/
が創刊となりまして。
10730-8.jpg
そこで、僕が
「思いやりデザイン講座」
と題したコラムを
書かせていただいてます。
鍛冶屋の可能性を
熱く語っておりますので、
お暇がありましたら
見てやっておくんなまし。
上のアドレスから
誰でも無料でダウンロード
できますので。
iPhoneでも見れますよ。

しかし、電子書籍の時代も
これから必ずやってくるだろうな
乗り遅れないようにしないと……


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2011年07月18日

博多包丁(製作工程)

さて、以前にコチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/210901215.html
http://uinversal.seesaa.net/article/117731841.html
でも紹介したことがある
「大庭鍛冶工場」なのですが
大庭さんはとってもマメなお方で
それに時々、小学校等で
講演などやられているみたいなので
博多包丁の製作工程がわかるものを
サンプルとして残してあるんですね。
うちの高柳師匠とは大違いです。
高柳師匠は完成作でさえ、
もう3年弱修業している僕でさえ、
あまり見たことがないくらいですから。
自分の手元に残さない
人なんですよねえ。

で、先日、久々に大庭さんちに
遊びに行った際、そのサンプルを
ひとつずつ撮影させて
もらいましたので
以前から撮らしていただいてる
作業風景とともに
博多包丁の製作工程をちょっと
ご紹介させていただきます。

博多包丁がどんな包丁なのかは
以前に紹介したコチラ↓
http://uinversal.seesaa.net/article/117825130.html
の記事をご参照ください。

博多包丁は
割り込みという方法で造られる
両刃の菜切り包丁でして。
まず1.2cm×3cm×9cmほどの
地金(生鉄、軟鉄ともいう)の
前半分の真ん中を割ります。
10717-1.jpg 10717-2.jpg
この割る作業には
向こう槌といわれる人員に手伝って
もらうこともあれば
ひとりで割ることもあり。
ここでは向こう槌を弟子が
手伝っている作業風景を
掲載しております。
10717-3.jpg 10717-4.jpg
で、下の写真、小さい鉄辺が
鋼(いわゆる炭素鋼)です。
鋼は日立金属のブランド
「ヤスキハガネ」の黄紙
といわれるものを使用してます。
ヤスキハガネはその炭素量や
化学成分の違いによって
青紙・白紙・黄紙(固い順)
と分かれておりまして。また、さらに
それぞれの色から1号や2号と
分かれているのですが、
それはまた次の機会に説明します。
10717-5.jpg 10717-6.jpg
で、地金の亀裂に
鍛接剤(鉄蝋、フラックスともいう)
の「ほう砂」をふりかけ、鋼をはめこみ
1000度ほどで熱し、一挙に
鍛造機(ベルトハンマー)等で
叩き、くっつけます。
10717-7.jpg 10717-8.jpg
その後、何度も何度も、
金敷の上で鎚を振り下ろし、
徐々に包丁の形へと近づけます。
この鎚さばきが見ていて
一番面白いとこですかねえ。
ほんとマジックでも
見ているかのように
見事に形が出来ていきますんで。
10717-9.jpg 10717-10.jpg
ところで、この大庭さんの金敷
先日、紹介した高柳さんの金敷↓
http://uinversal.seesaa.net/article/215103789.html
と見比べると、その違いが
大きく見て取れます。
大場さんは2つの金敷を併用してて
手前にあるのが和金敷、
向こうにあるのが洋金敷ですな。
やっぱ包丁や鍬を造る大庭さん
なので金敷も高柳さんのものより
大きいんですな。
10717-11.JPG 10717-12.jpg
さて、ここで、次第に
包丁の形が出来上がっていく
様子を見ながら、またちょっと
地金と鋼の話をば。
鋼は炭素量が2〜0.04%の鉄
のことをいい。
ある程度の温度まで赤く焼いて
それから水や油の中で
急冷すると組織が変化して
大変硬くなる性質があるんですな。
しかし、硬ければいいってもんじゃなく
カッチカチに焼きの入った鋼は
今度は衝撃に弱く、欠けやすい
といった特徴も持つんですね。
そこで、今度はある程度まで
温めなおしてやると、また
粘りを持つようになるんですな。
これを“焼き戻し”の作業といいます
10717-13.jpg 10717-14.jpg
さらに、柔らかい鉄=地金
を合わせることで衝撃に強い
刃物を造っているんです。
地金は炭素量が0.03%以下の鉄
のことをいいます。
この鉄は何度で温めても急冷しても
焼きは入らないんですな。
これが、西洋にはない
日本の刃物の特徴的構造でして、
日本刀も基本的には
同様の構造ってことになります。
10717-15.jpg 10717-16.jpg
これを、科学もまだ何も無い
大昔にですよ。経験と勘だけで、
形作っていったっていうんだから
驚きなんですよねえ。

で、大庭さんとこでは
焼き入れはコークスの直火を使い
菜種油で冷却して行います。
10717-17.JPG 10717-18.JPG
焼き戻しはグラインダーで削るときの
摩擦熱でおこなってるみたい。
10717-19.jpg 10717-20.jpg
あとは砥石で研ぎ
柄をはめ、焼印を入れて
できあがり。
10717-21.jpg 10717-22.jpg
こうやって、文字におとすと
簡単ですけど、実際やってみると
文字では表わせない、
コツやタイミングとかあって
ほんと奥が深いんですよ
鍛冶作業は。
10717-23.JPG 10717-24.JPG
まだまだ、ここでは
書ききれなかったことも沢山ありまして
それはまた、これから、いろんな
場面にて紹介させていただきます。
皆さん、ついてきてね〜。
10717-25.jpg


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2011年07月16日

ユニバーサルデザイン鋏('11年7月・5寸・1日目)

さて、おなじみの週末鍛冶修業。
今回造ろうと思っている鋏は
言葉で説明するとこんな感じ。
普通の鋏は手動で、
開いて閉じて、開いて閉じて
という運動を繰り返し、
物を切っていくわけですが、
その開いての運動を自動で
してくれる鋏を造れないかと。
要するに人間は閉じる動力だけで
物を切っていくことができる。
まあ、コチラで紹介されているような
剪定鋏などではよくある
仕組みなんですけどね。
それを、紙切り、布切り、
文房具系の鋏に採用できんかと。

で、師匠に相談しつつ
形作っていってみたのだが、
問題となったのはまず
目釘の穴の位置。
普段よりかなりアシ側にあいていないと
アシに付けるバネでは
大きく開かんやろうと。
しかも、刃の位置も普段より
後ろに持っていくことで、
広く開くことになるであろうと。
分かるかなあ、分かんねえだろうなあ。
10716-1.JPG 10716-2.JPG
ということで、1日目
鍛接、鍛造を終え、
ちょっと削ってみたのがこれ。
まだ削り足りなかったりした部分や
目釘の穴の位置をマジックで
書き足してみた。
10716-3.JPG 10716-4.JPG
この下書きをもとに2日目は
さらに荒削りをし、焼き入れまで
もっていく予定。
さて、どうなりますでしょうか。

と、本日の鍛冶道具紹介をば
この1日目の作業
鍛接、鍛造における主役のひとつ。
「金敷(カナシキ)」と申します。
「金床(カナトコ)」とも言うみたいですが。
10716-5.JPG 10716-6.JPG
この上で赤らめた鉄を鎚で叩き
形成する鉄の作業台ですな。
地面に固定されているというか
見えてる部分の倍に近い本体が
地面のなかに埋まっているそう。
それぐらいせんとこの激しい作業には
耐えられないんでしょうねえ。
頭の面が固い鉄・鋼でできており
本体がやわらかい鉄・地金で
できています。よく見ると
頭の面が真っ平でないのがミソで、
この湾曲があることで、
鉄がよく伸びるんですねえ。
分かるかなあ、分かんねえだろうなあ。

これがいわゆる和金敷といわれるもので
西洋金敷と呼ばれるものもあるんだけど
それはまた次の機会にて。
皆さん、ついてきてね〜。


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2011年07月04日

創作鋏('11年6月・5寸・3日目)

これ、細工台とでも申しましょうか。
呼び名は特になかったと思います。
10703-1.JPG
本研ぎを終えた鋏はここで、最終的に
常温にてアシ(持ち手)を曲げられ
カシメ(合体)られ、穂の角度や
アシの湾曲などの微調節が加えられ、
キレる鋏へと仕上げられていきます。

中央にあるのが金床(カナシキ)、
その右手にあるのが微調整用の鎚、
左手奥にあるのが木台ですな。
この木台がけっこうキモでして、
この上で作業することによって
木がショックを吸収してくれ
鋏が折れたり、傷がつくことを
ふせいでくれるのです。
あと、その木台の足元に
転がってるのが、アシの部分を
曲げるときに使う金型ですな。

で、今回、完成したのがこの鋏。
前回コチラ↓で説明したとおり
http://uinversal.seesaa.net/article/210503987.html
“黒造り”により仕上げられた
創作鋏とでも申しましょうか。
10703-2.JPG 10703-3.JPG
黒造りには見た目のシブさ
の他に、機能的な利点もありまして
ひとつは、錆びにくい。
あと、濡れた手で触っても
滑りにくかったりします。
だから、包丁とかは
この黒造りで仕上げられたものが
多いんですね。
そうそう、コチラ↓で
http://uinversal.seesaa.net/article/117825130.html#more
紹介したことのある
大庭さんの包丁も黒造りですね。
10703-4.JPG 10703-5.JPG
いかがでしょう。
なかなか存在感がある
と自分では思っているのですが。
(笑)
あと、通常の博多鋏は
丸アシといって、握り手の部分が
円柱棒状で出来ているのですが、
今回、少しでも滑りを押さえるため
平打ち角柱棒状で形成してみました。
10703-6.JPG
いいんでないの?


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posted by アサケン at 13:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 鍛冶修業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月20日

大庭鍛冶工場(2回目)

さて、下の写真のお方
大庭さんと申します。
10519-1.JPG 10519-2.JPG
以前、このブログでもコチラ↓で
http://uinversal.seesaa.net/article/117731841.html
http://uinversal.seesaa.net/article/117825130.html
紹介させていただいた
ことがあるのですが。
すごい鍛冶職人なんです。

で、私めは第二の師匠と慕っており
時折、工場へ遊びに行っている次第

本日はコチラ↓で紹介した
http://uinversal.seesaa.net/article/202480662.html
自作の鋏をもって、
ちょっとその出来を見てもらおう
と訪ねた次第。

大庭さん、ニコニコしながら
僕の鋏を手に取り
「かたちになっとるやん」と。
おおお、
は、はじめて褒められた(号泣)
10519-3.JPG 10519-4.JPG
「いつか、博多包丁の作り方も
教えてくださいね」
って言ってるんだけど……
どうなりますことやら。


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posted by アサケン at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 鍛冶修業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする