2022年02月02日

博多唐鋏(6寸)

新しい鋏が完成しました。
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前から言ってたとおり、
これはニノ字菱紋が刻まれた
いわゆるノーマルな博多鋏ではありません。
代わりにというわけでもないのですが、
アシ(持ち手部分)には
絹焼きと言われる技法で
黒錆表面処理を施しております。

ニノ字菱紋を最初に刻んだのは
師匠のお爺さんらしく、
それが明治20年のこと。
そしてこのタイミングで
それまで「唐鋏」といわれていたものを
「博多鋏」と改名したそうです。

今から約700年前、
謝国名が中国より持ち帰ったのが
日本で初めてのクロス型の鋏(唐鋏)
と博多では言われています。
その後、幕末のころ、
刀鍛冶士として立ち行かなくなった
安河内卯助氏が、鋏の製作に取り組み
この唐鋏を世に出しました。
師匠のお爺さんはその卯助の弟子となり、
卯助の死後「宇」の字の刻印を引き継ぎ
今の博多鋏を考案しました。

今回の作品は卯助さんが世に出した
唐鋏をイメージして作ってみたものです。
ぱっと見た感じは
鹿児島の「種子鋏」と似ていると思います。
しかし、違いは種子鋏のアシが
平棒状になっているのに対し、
こちらは丸棒状になっているところです。


これも前から言ってたとおり、
今回の鋏は全長6寸になります。
前に作った5寸の博多鋏1号と
並べ比べるとその違いは一目瞭然。
しかし、極限まで薄く作ってみたので
見た目ほど重くはありません。
フォルムは博多鋏と全く一緒です。
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今回のような
博多鋏のフォルムを持ちながら、
ニノ字菱紋が打ち込まれていない
鋏の存在を以前に
師匠から聞いたことがあります。
それは眼鏡(メガネ)と呼ばれていた
と言っていました。
一方、ニノ字菱紋が打ち込まれたものは
菱足(ヒシアシ)と呼ばれていたそうです。

そのメガネと呼ばれていた鋏は、
アシ(持ち手部分)がヒシアシ同様、
銀色のままで、
そして穂(ホ・刃の部分)と
アシの境界線がヒシアシ同様、
線の溝で区切られていたと思います。
要するにただニノ字菱紋が
打たれてないだけの博多鋏です。
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しかし今回のこの鋏は、
ホとアシの境界線に段差を作っています。
ちなみにそれは種子鋏も同じなのですが
ホに当てたグラインダーが
黒錆加工を施したアシに
およばないようにするためです。
細かいところですが、
これと全く同じデザインの鋏は
他には存在しないでしょう。

これは博多鋏をリスペクトした
僕のみのオリジナルな鋏です。
名付けるなら
「博多唐鋏」
といったところでしょうか。


それでは最後に切れ味証拠動画を
YouTubeでご覧ください。

posted by アサケン at 17:31| Comment(0) | 鍛冶修業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月07日

6寸鋏・生研ぎ&本研ぎ

ひたすら削って、研いで、
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エラーとカバーを繰り返し、
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少しずつ少しずつ鋏の形が決まっていく。

そして、ようやく生研ぎが終了した。
あとは焼入れに本研ぎ。
今回はこの段階で足曲げを行った。
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焼入れ前に絹焼き(師匠は燻しと言っていた)
と呼ばれる黒錆表面加工処理を
足部分に施すためだ。

そして今回はニノ字菱紋も入っていない。
これは博多鋏じゃないからだ。
はたしてこの鋏は何なのか?
乞うご期待!
posted by アサケン at 14:58| Comment(0) | 鍛冶修業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月15日

6寸鋏・鍛造&鍛接

沸かしつけ、そして、火造りも終了。
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ちなみに、ここまで
ほとんど鎚一本で形成している。
できるだけ鉄を削らないで作ることが
鍛冶屋のプライドなのだ。
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「鉄を無駄にしない」
師匠に教わった大事な心得だ。

そんな鍛造後に
我が鍛冶作業の要であった
コークス炉にクラックを発見する。
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致命的な大きさでもないが…ショック。
永遠の道具ってないんだね…。
しかし落ち込んでばかりもいられない。
であれば修理して
使えるとこまで使うのみ。
修理してくれる製造元もないなら
自分で直すのみ。
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職人にとって道具との格闘も
大きな仕事のひとつ。
これまた師匠に教わった大事な心構えだ!
posted by アサケン at 16:34| Comment(0) | 鍛冶修業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月14日

6寸鋏・地切り・鋼・寸法

6寸の鋏は師匠のところに
出入りさせていただいてた頃
1度しか作ったことがないので
そのデータが自分の頭の中に
あまりない。

今後のために
地切りや鋼の寸法を
記録に残しておこうと思う。
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教えてくれる人はもういない。
これからは自分だけで悩み
自分だけで蓄積する。
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posted by アサケン at 16:33| Comment(0) | 鍛冶修業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月17日

コークスと曲げ金

師匠にいただいたコークスが
なくなったので自分で仕入れる。
徳島にある里見燃料株式会社
というところから
小粒Sサイズのものを10kg購入。
師匠が使っていたものと一緒のものだ。
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このコークスでまず作ったのが
6寸の鋏用の曲げ金。
アシと呼ばれる鋏の持ち手部分、
輪っかになったところを曲げる
型のようなものだ。
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ちなみに前回作った
博多鋏の1号と2号は5寸。
今回作ろうとしているものは
そのひとまわりでかい鋏になる。
そして今回のものは
博多鋏ではない鋏を作ろうと思っている。

それは博多鋏のルーツを探りつつ
自分だけのオリジナルな鋏に
なってくれればと目論んでいる。
こうご期待!
posted by アサケン at 11:35| Comment(0) | 鍛冶修業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする